『画像ラボ Vol.35 2024年1月号』にRUTILEAが掲載されました
2024年1月9日
お知らせ
「AIを簡単に。」の株式会社RUTILEA(本社:京都府京都市 代表取締役社長: 矢野貴文)は、『画像ラボ Vol.35 2024年1月号』(発行:日本工業出版)に掲載されました。
■掲載紙:画像ラボ Vol.35 2024年1月号
■発行所:日本工業出版
■特 集:自動外観検査&マシンビジョンテクノロジー最前線①
■記 事:生成AIを用いた不良品画像生成技術(p. 85~88)
■執筆者:株式会社RUTILEA事業部 プロジェクトマネージャ 新﨑聖峰
以下記事本文となります。
「生成AIを用いた不良品画像生成技術」
AI-based defective image generative technology
筆者
新﨑 聖峰
株式会社RUTILEA 開発部
はじめに
深層学習を利用したセグメンテーション、読み取り、分類などの技術は、工業用マシンビジョンにおいて表面の外観検査などの領域で利用されている。これらの技術では画像データから特徴量を学習し、従来のルールベースの画像処理では困難であった問題の克服が進んでいる。
深層学習を活用する際の一つの課題は、学習の過程で大量の画像データが必要となることである。十分な学習データがないとAIの精度が保証できず、結果的に検査精度が低下する可能性がある。そのため、画像処理を用いた検査工程では、多くの場合、大量の画像データが要求される。
画像を大量に用意する際の課題
画像データを大量に用意する際の課題として、人的コストや時間的コストが増加することが挙げられる。これらのコストを削減し、効率的に高品質のデータを集める方法を見つけることが、今後の深層学習の研究や開発において重要である。
実際のシーンを撮影してデータを集める手法があるが、この方法では多くの時間や労力が必要であり、高品質のデータを確保するためには専門の知識や機材も必要である。また、撮影データの整理や確認にも手間がかかる。さらに、不良品のサンプルは集めるのが困難であり、良品のサンプルと比較して収集が一層難しい。
その他の手法として、光学シミュレーションを用いた画像生成もある。これはコンピュータ上で光の動きをシミュレートし、仮想的なシーンの画像を生成する方法である。リアルな光の反射や屈折を考慮した画像が生成でき、多様な条件下の画像を効率よく用意することができる。しかし、シミュレーションの設定やパラメータ調整には専門的な知識が必要であり、完全に実環境を再現するのは容易ではない。そのため、一部の環境や条件では実際の画像と差異が生じる可能性がある。
生成AIを利用した良品画像・不良品画像の生成
上述の問題に対応するために、生成AIを活用した良品画像・不良品画像の生成方法を紹介する。生成AIを利用することで、良品および不良品の画像を簡単かつ迅速に生成することが可能となる。具体的には、生成対象となる良品・不良品の特徴をAIモデルに学習させることで、その結果を基に新しい画像が生成される。AI生成画像の活用により、実際には存在しない様々な不良品のケースに予め準備し、対応することができるため、生産ラインの稼働率の向上が期待できる。これは、製造プロセスにおいて品質管理がより柔軟かつ効率的に行えることを意味し、生産コストの削減にも寄与する。
また、生成AIの技術は日進月歩で進化しており、更なる高精度な画像生成が可能となっている。例えば、Stable Diffusionなどの先進技術を活用することで、非常にリアルな良品・不良品の画像が生成され、実際の製品と見分けがつかないほどのクオリティを持つことができる。
ソフトウェアの紹介
上述の問題に対応するために、不良品画像生成AIサービスを導入し、生成AIを活用する方法を紹介する。このサービスのメイン画面(第1図)では、ユーザーは初めに、選択肢(A)から目的のワークと不良の種類を選択する。
第1図 不良品画像生成AIサービスのメイン画面
ワークの種類 | 不良の種類 | 説明 |
金属 | キズ | 摩擦による金属表面の局所的なキズ |
割れ | 急激な加熱や冷却、材料の不均一性による局所的な亀裂やひび割れ | |
凹み | 衝撃や圧力による局所的な変形や凹み | |
ネジ | 頭部キズ | ネジ頭部のキズ |
首部キズ | ネジ首部のキズ | |
先端潰れ | ネジ先端の曲がり、潰れ、欠損 | |
螺旋部側面キズ | ネジの螺旋部上面の局所的なキズ | |
螺旋部頭部キズ | ネジの螺旋部横側の局所的なキズ | |
食品 | 虫 | 食品上の小さな虫 |
カプセル | 割れ | カプセル表面の割れ |
印字ミス | 印字の掠れ | |
キズ | カプセル橙部分表面の傷 | |
破損穴 | カプセル表面の破損穴 | |
錠剤 | 色素異常 | 錠剤表面の異なる色素 |
複合異常 | 色素異常、破片混入、キズの中からランダム | |
破片混入 | 錠剤に乗った錠剤の破片 | |
キズ | 錠剤表面の傷 | |
プラスチック | キズ | 摩擦によるプラスチック表面の局所的なキズ |
割れ | 強い圧力や、プラスチックの劣化による局所的な亀裂やひび割れ | |
異物 | プラスチック表面の異物の付着 | |
欠け | 衝撃によるプラスチックの一部の欠け |
第1表 生成可能なワークの種類と不良の種類
第2図 不良品画像生成AIサービスの結果詳細画面
次に、画像選択セクション(B)において、サービスが提供するサンプル良品画像データを利用するか、あるいはユーザーが自身で準備した良品画像データの中から1枚を選択する。その後、ペイントツール(C)を活用し、不良部分を生成したい箇所をユーザー自身の手で塗りつぶし、不良品画像の生成プロセスを開始する。生成が完了したら、生成結果ページ(D)にて、生成された不良品画像を確認できる。
(A)ワークの種類と不良の種類の選択肢では、多くのユーザーが困ることなく、生成すべき不良品画像の事例を選択できるよう、事例が豊富に用意されている(第1表)。これにより、ユーザー
は迷うことなく生成プロセスを開始できる。これらの種類の画像生成のための生成AIの学習はすでに行われており、ユーザーは容易にサービスを利用できる。
(B)画像選択セクションでは、初めて利用するユーザーであってもどのような良品画像データを用意すればよいかが容易に理解でき、また、ユーザーが希望する特定の良品画像データを利用して、カスタマイズされた不良品画像を生成できる。
(C)ペイントツールは、非常に簡易なインターフェースを有しており、どの部分に不良を生成するかを直感的に選択できるよう設計されている。
(D)生成結果ページでは、生成された不良品画像がタブ画像形式で表示され、一覧で確認できる。もし複数の不良品画像を生成した場合でも、各画像結果を素早く、かつ容易に識別し、アクセスできるよう工夫されている。これにより、ユーザーは生成された画像データを効率的に管理・活用できる。また、個別の結果の詳細を確認することもできる。(第2図)
おわりに
本誌では、製造現場の検査工程で積極的に用いられ始めた深層学習による画像処理技術を紹介し、大量の画像生成が必要とされる学習データの課題に焦点を当てた。その解決策として、生成AIによる学習用画像生成技術および不良品画像生成AIサービスを提案した。
生成AI技術の進化は、検査工程の精度と効率を向上させるものと考えられ、検査員の作業負担の軽減が期待される。これを通じて、働き手に配慮した社会が実現可能となり、製造業の持続的発展へと寄与するであろう。
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6F Y.J.K Bldg, Shimomaruya-cho 397, Nakagyo-ku, Kyoto 604-8006, JAPAN
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